ピーク届かず! 爺ヶ岳南陵

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■山行日:2022年04月10日
■山:北アルプス:爺ヶ岳
■目的:後立山大展望
■ルート:ゲート(05:45)ー登山口(07:35)ージャンクションピーク(12:15)ー登山口(17:10)

この数年狙っていたルートがある
爺ヶ岳南陵だ
柏原新道を夏道から反れ、ほぼ直線で爺ヶ岳南峰へ進む冬季限定ルート
まだ雪に覆われた立山連峰、その姿を求めて、今年こそいざ




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ネット情報では冬季進入禁止のゲートがあることは知っていた
でもそれは今週末から解除される、そう書かれていたはず
しかしゲートは閉じられていた、まるでこの先はまだ冬なんだぞ
そう言い聞かせるように
しっかりと閉じられていた

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もう解除されていることを前提としていたので
柏原新道までの距離感も分からず、こつこつと林道を進む
しまった!ピッケル車の中に忘れてるぞ
気付いてよかったよ、と引き返すことで、さらにロスタイム20分

二つ目のスノーシェッドを過ぎる頃、もう明るい空の下
針ノ木方向が輝いている姿を拝みながら諦めた
こんな感じだと登山口は7時半だ
ってことは今日は間違いなくピークは踏めないだろう


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なんだか、一気にモチベーションダウン
もう帰ろうか、なんて気弱になりながらも登山口へ
もちろん、こんな時間の林道には誰もいなくて
ゲート前に駐車していた数台の登山者は今頃中腹辺りを攻めていることだろう


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ま、いいさ
針ノ木の姿を間近で拝めたら
そして、この南陵ルートの核心部を掴んで、来期に備えればいいさ

そんなゆるいカンジで歩き始めたが、柏原新道は雪に埋もれ
トレースが無ければ、とてもじゃないがソロで初めて歩ける状況では無い


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踏み抜きも覚悟はしていたが、それは夏道からすでに始まり
登りでこんなに踏み抜きで苦労した経験は無くて
陽の射さない樹林帯にもかかわらず、すでに汗びっしょり

そして駅見岬辺りから、夏道を反れ
いよいよバリエーションルートへと踏み込んで行く


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そこだけ陽が射して明るい場所で、はじめて出会う3名グループ
みなさん、表情から今朝の素晴らしき展望を満喫されたことが伺える
どうやらテン泊からの下山のようだ
少しだけ会話すると、この尾根は踏み抜きがひどくて午後に歩くのは危険だとか

一度経験あるんですが、脱出できないほどの踏み抜きが続きますよ

危険?脱出できない?マジか


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そこから始まったのだ
踏み抜き地獄が・・・

画像では分かりにくいが、膝オーバーの連続
この時間でこの状態、下山する頃はどうなってることやら


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それでもまだ、樹林の合間から望むピークに胸震わせる
そんな余裕があった、この時までは


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踏み抜きを恐れているうちに、東面の雪庇へと近付いていることに気付き
樹林の中へ慌てて戻っては踏み抜いて、そんなことを繰り返しながら
やっとピークへ繋がる南陵の姿を捉えることが出来た

でもまだピークすら見えない
こりゃ遠いな
いや、もちろん今日は諦めてるけれど


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踏み抜きと急登に疲れては振り向く
すると、この素晴らしき光景がどんどん近づいて来る

あぁまだ頑張れそうだな


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尾根の東面は雪庇、その根本はクラックもある
ヤバいヤバい、こっちじゃないよ

でも樹林に戻ると踏み抜き地帯
もういい加減、嫌気がさしてきた頃
ついに目標としていた所に立った


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ジャンクションピークだ
もうこの尾根を真っすぐ詰めれば爺ヶ岳南峰、ほらピークが見えている
そして、あのピークに立つと、雪に覆われた立山連峰すべてが望めるのだ


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と、そのピークを恨めし気に睨むが、すでに時間は12時過ぎ
ここまでの体力消費を考慮すると、どう見てもピークまで60分じゃ行けない
悔しいな、もうそこじゃないか、仮にここから往復120分だとすると?
いや、あの踏み抜き地帯を下るのだ、もうここが限界だろう

思わず座り込んでしまうほど悔しさがこみ上げる


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そのまま雪の上に転がって悔しさに空を仰ぐ
ふと振り返ると
蓮華の左に尖がりが見えるぞ?


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なんと!
穂高が、槍が・・・


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こんなにも素晴らしい展望に囲まれてりゃ充分じゃないか

槍が見えただけで、気持ちも切り替わる
我ながらゲンキンなものだ
(自撮り画像は不機嫌そうだけど)


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しばしジャンクションピークに寝転んで大展望を堪能すると
最後に南峰を睨んで下山開始


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陽が傾き、針ノ木も蓮華も陰影が濃くなって行く
その美しさに魅せられながらも足元は踏み抜き地獄

融雪が進んで膝オーバーどころか脚の付け根までずっぽり
普通に歩ける歩数の方が少ないくらいの連続した踏み抜き地獄


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2度ほどマジで脱出できないのでは?と真剣に心配するほど足が抜けず
苦労しながらスマホを掴んではアンテナを確認して
あぁ大丈夫、いざとなったら連絡は付く

そんな弱気な自分にカツを入れ、ヤブ枝にピッケルを預けて這い上がる
正面の針ノ木雪渓から、大きな岩と共に雪崩れて行く音が響く

あぁ早く帰らなければ


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踏み抜きが深すぎると、雪上に残った方の片足にも大きな負荷がかかり
そのままの状態で倒れると、上半身も折れてココロも折れて
気付いたら膝からは出血、顔は見なくてもヤブで引っ掻かれて
挙句の果てにポールは片方が折れてもう満身創痍
這々の体で登山口へ下ると17時過ぎ


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もちろん誰一人いない林道をとぼとぼ引き返す
身も心もボロボロなところへ、急激に冷え込んだ風が吹きすさぶ

もう
もう二度とこんなバリエーション歩くもんか


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風の冷たさにがたがた震えながら振り返ると
美しき夕景
その姿だけがせめてもの慰めだ

今日のこの夕景も
また忘れられないものとなった





Commented by cyu2 at 2022-05-02 12:44 x
スロさん、相変わらず攻めてますね~
ジャンクションピークの眺め、素晴らしいですね!
あと少しで残念でしたが、あの稜線を拝めただけでも。
普通の人は拝めませんからね~
踏み抜きは怖くないんですか?私はびびりーだから、
ちょっと沈んで足が抜けにくい状態になっただけで冷や汗ですよ。

でも私には見えます、来年、踏み抜き対策にわかんを背負い、青空の稜線で笑うスロさんの姿が( *´艸`)

Commented by slow-trek at 2022-05-02 16:32
cyu2さん

いえいえ今回ばかりは攻めてるどころか、攻められっぱなしで^^;
もうしません、ごめんなさいって、何度心でつぶやいたやら
まぁその分の展望はモノにしましたけどね、苦労疲労と比較すると
どうだかな?ってところでした(涙
来年?ワカン背負って?えぇ~
いや実はスライドした方に聞くとワカンは返って危険かもって
雪の中はヤブだから、そこで輪がひひっかかりでもした日にゃ・・・
だから対策としては、雪が締まってる時期?もう2週早めに行くかなぁ
って、行くんかぁ~い(^^;
by slow-trek | 2022-05-01 23:00 | 北アルプス | Comments(2)