百年食堂 芦池更科

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  なんやて?「他人丼」って何ですかやて?
  お前なぁ、そんなん知らんと大阪でサラリーマン出来へんぞ
  鶏肉と卵で親子やろ?牛肉と卵やったら、そら他人やろ
  そんなん常識やで、常識

1980年代後半だった
バブルの狂乱が始まった頃だろうか

当時は入社後二年間、本配属されず、3箇所ほど別業種業態の
クライアント先に預けられ、実地研修の名で鍛えられていた
 
その間、預けられたのは偶然にも2社続けて大阪は本町エリアだった
華やかな心斎橋から近くも、古臭い問屋街、その名も丼池(どぶいけ)筋
普段なら絶対歩くことの無い問屋街の飲食店に通うことになった
 



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中でも良く通ったのは、二つ目の研修先の先輩が行きつけだった
この古めかしいお店 「芦池更科」 だった
当時から歴史を感じさせるシブいお店、ここで先輩にいろいろ教わった
そう、仕事とは一切関係の無いことを

大阪の街も、社会のオキテも、右も左も分からない小僧なオレは
他人丼を知らなくてサラリーマンが勤まらない、なんて言われても
逆に、こんな先輩に付いてて大丈夫なんだろうかと心配したものだ


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  台抜き?台抜き言うたら、台抜いたやつやん
  台言うんは、メシやうどんのことや
  カツドン台抜き、言うたら、カツドンの上だけ。な?
  それをアテに一杯飲むんがオトナなんや


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新入社員に向かって得意げに講釈を足れていたY先輩
今から思えば彼も20代後半の若手社員、精一杯大人ぶってたんだろうな
なんてことを思い浮かべながら、親子丼の台抜きで熱燗


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あの頃はご飯食べるだけだったお店
こうやって20年以上経ってここで昼間っから熱燗やってるなんて

ふっと、ひとり笑い、しみじみと酒が沁みる
 
〆は牛飯
懐かしき丼、こればかり食べてたっけ
あの頃と同じように漬物が小皿でふたつ付いてくる

 「ひとつやったら物足りんやろ」

あの頃と同じようにお店のお母さんが一言添える


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お母さん、僕ね25年ほど前に、よう通ってたんですよ
今もやってるって、人に聞いてね、たしか土曜日もやってたなぁて
そう思ぉたら、もう無性にここの牛飯食べたくなってねー
あの頃お金なくて、他人丼より50円でしたっけ?安かったの
だから、この一番安いのんばっかり食べてて、いやほんま懐かしいです


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まぁそうですかぁ
なんやしら見たことあるお顔やな思うてましてん・・・

今でもそれくらいの上手は言えますねんで、ほっほっほっ
そうですかそうですか、25年ぶりにねぇ
よぅ来てくれはったなぁおおきに
もういつ死ぬや分からんよって、たまには生存確認に来て下さいや


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今も昔も華やかな御堂筋
カルティエとエルメスのショールームの間を東へ二本入ってみれば
そこだけ時代に取り残されたかのような通りとお店

聞くと今も変わらず朝から夜まで休憩無しの通し営業
1950年から、ずっと同じスタイル、同じ味、同じお香り

僕に踏まれた町と僕が踏まれた町
どうか百年続きますように



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Commented by pallet-sorairo at 2017-06-24 22:37
きょうもまたいい話やなぁ。
親子丼の台抜きって、
うちでもたまにこんなんやりますがな。
漬物ふたつに、思わずぐっときましたわ。
ほな。

大阪弁、こんなんであってますやろか(^^;
Commented by cyu2 at 2017-06-25 20:25 x
うーーん、あまーい、玉ねぎの香りが漂ってきたわぁー


台抜きか、初めて耳にした言葉です。

百年食堂、いいね(・∀・)
Commented by katsu♨︎ at 2017-06-26 22:40 x
きょうもまたええ話でんなぁ。
親子丼の台抜きゆうたら、
うちでもたまにはこんなんやりまんがなぁ。
つけもんふたつに、ごっつうきよりましたがなぁ。
あんさん、どんならんなぁ。
ほな、またおいで。

河内弁、まだまだでんなぁ・・・
Commented by slow-trek at 2017-06-26 23:38
palletさん

>大阪弁、こんなんであってますやろか(^^;

ふふふっ
palletさんって、なかなか器用ですねー
合ってるどころか、充分大阪人で通用しますよん^^
Commented by slow-trek at 2017-06-26 23:42
cyu2さん

ちゅちゅさん「台抜き」って、関西だけでなく
一般的に通用する言葉のようですよー
今度、行きつけのお店でオーダーしてみてくださいな
あ、この牛飯の主役は牛肉じゃなくて
あまぁーい、あまぁーい、玉ねぎです^^
Commented by slow-trek at 2017-06-26 23:47
katsu♨さん

>あんさん、どんならんなぁ。

河内弁かどうかは別として
きっと今の大阪で「あんさん」って死語かと^^
でも「どんならん」は標準語ですなー
あぁ大阪ってディープだわ(^^;)
Commented by katsu♨︎ at 2017-06-27 00:16 x
あれま!
スロはんとこの南河内では死語でっか!
うちらの北河内ではこの前も商店街のおばはんに、あんさん、言われましたがな〜
まあ、そんなん、どおでもええねんけど・・・
「どんならん」は関西弁の標準語で、日本の標準語とちゃいまっさかいな〜
あのなぁ!大阪弁はある意味外国語に近いでっせ〜
Commented by slow-trek at 2017-06-27 07:14
katsu♨さん

>スロはんとこの南河内では死語でっか!
ひ、ひつれいな!
私のエリアはお上品な中河内であって
決して南河内ではありません、そこんとこ
くれぐれもよろしくお願いします^^
Commented by oris at 2017-06-27 23:18 x
昔は個性ある食べ物屋さんや喫茶店があってよかったですね。
若いころに通った店って久しぶりに訪れるとその当時のことを思い出しますよね。
時間が経つと嫌なことも理不尽なこともたいていはいい思い出に変わってます。(*^^*)
でも、そんな店って久しぶりに訪れてみても閉店してしまっていることが多くて残念です。
今はどの街に行ってもチェーン店が幅を利かせていて
同じようなメニュー、マニュアル化された接客で味気ないですね。

100年続きますように・・・ ハナミズキですね。。。
永遠じゃなくて、100年って表現は人の切実でささやかな願いって感じで素敵です。
Commented by パンダ at 2017-06-28 00:01 x
ご無沙汰してます。

本町でしたか
う〜ん、そうですか、いいお話ですね。

私は4月より大阪に帰ってきまして、堺筋本町で勤務してます。
なんせ内勤は初めてなもんですから、限られた時間の昼飯戦争を戸惑いながら楽しむ毎日です。
まあそれなりに面白い店はありますが、こんなディープなお店には巡り会えてません。
Commented by slow-trek at 2017-06-28 23:30
orisさん
そうなんですよねー、どの街にいても
同じ看板、同じメニュー味気なくて、何だかなぁです
だからこそ、こうして、昔の想い出が残るお店が
今もやってくれてることに感動すら覚えます。
永遠じゃなくて百年、その方が少しは現実的でもあり
Orisのおっしゃる通り、切なくもあり。。。
Commented by slow-trek at 2017-06-28 23:38
パンダさん
こちらこそ、ご無沙汰しています
本町って言うか、ほぼ心斎橋北端ってところですね
あの頃と同じ店が残ってたとしたらディープ地帯
なんですけどね^^
なんて事はさておき!大阪に戻られたのですね!
そうですかぁ奥様も喜ばれたことでしょう
私はサラリーマン人生を終えるまでは戻れませんが
ぼちぼち近畿の山とも付き合って行きます
Commented by wannpaku3 at 2017-07-01 23:39
ジオンです
うちらの他人丼は豚肉
関西は牛がメイン
東海は豚がメインなのかな
わざわざ牛丼と言わないと、肉丼は多分豚丼だと思う、、。
どんぶりあんまり好きじゃなくて、、
台抜き、初めて知りました、、。
家族には親子丼、牛丼、、
私は台抜きでビールのあてしてます。
Commented by slow-trek at 2017-07-02 22:17
ジオンさん
そーでしたかぁ、そーだったんだ
(肉=牛肉)って文化の境界線は東海地方に
あったのですねー!
私の関東カルチャーショックの最たるものは
忘れもしない「肉じゃが事件」なのです
もうお分かりかと思いますが、居酒屋で
オーダーして出てきた肉じゃが、なんと豚肉(´Д`)
もひとつは「肉うどん事件」はい、そのまんま^^;
人生、いまだに勉強です^^
by slow-trek | 2017-06-24 21:09 | | Comments(14)