不帰ノ嶮 白馬大雪渓から唐松岳(前)

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■山行日:2016年08月12日(金)-13日(土)
■山:白馬鑓ヶ岳:天狗岳:唐松岳
■目的:キレット超え
■ルート:猿倉(06:30)-頂上宿舎(12:00-12:40)-杓子岳-白馬鑓-天狗山荘(15:45)
      天狗山荘(06:00)-唐松岳(10:20-10:50)-八方池山荘(12:10)

三大キレット

云わずと知れた穂高連峰の大キレット
そして後立山連峰の、八峰キレット、不帰キレット

このラインナップ、唯一大キレットだけは歩いた
それは別に「キレット」と云う難所を攻めるのが目的では無く
槍ヶ岳を登るには、北穂高から縦走の到着点としたい、そんな想いがあったのだ

でも、今回は少し違う
久しぶりに岩稜を歩いてみたくなったのだ

6年前の、あの夏
槍ヶ岳目指して、大キレットをひとり歩いたあの日
全身で感じた熱さ、高揚感、岩肌の冷たさ、岩稜を流れる風
そんなものをもう一度感じてみたくなったのだ

そして選んだ二つ目のキレット
それは不帰ノ嶮(かえらずのけん)

さぁ、もう一度キレットを歩こう
もう一度、あの夏の日を歩こう




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山の日の深夜の猿倉駐車場、意外にも空きスペースがちらほら
その一つに停めると、ラゲッジに寝転がって星空を眺めながら缶ビール
タイマーなんて必要なくて、明け方にはしっかり目が覚める

睡眠不足で寝ぼけた頭で、ふらふらと用意してる間に
出発は、予定を20分もオーバーだ

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すでに汗びっしょりで着いた白馬尻から望むも、雪渓は少ししか見えない
今年の雪渓は短いと聞いてはいたが・・・

15分の休憩でクールダウンすると、行列へ入り込み雪渓へと進が
巻き道から雪渓へ降るポイントが、いつもよりかなり上方だ

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それもそのはず、雪渓下部はクレバスどころか完全に割れている

  こりゃ、どうしたんだ・・・こんな大雪渓は見たことがない

その姿に呆れ、いや、愕然とした老登山者が立ちすくむ
たしかに、この様子じゃクレバスも多くあるだろう

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その雪渓にやっと脚を踏み入れ歩き始める

例によって、谷を巻き込む一瞬の風が全身を冷やしてくれるが
すぐに、暑い陽に焦らされての繰り返し
そして中間辺りを越えるとガスが降りてくる

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杓子の方向、カラカラ、ガラガラと大小の落石の音が響く
それは、濃いガスに隠されて、様子が分からないことが恐ろしく
ついつい、足早になってしまう

雪渓の終端手前辺り、不気味なクレバスが一文字に大雪渓を割り
その前後では、クレバスを知らず踏み込んだ足跡
これはヤバそうだな、このまま秋を迎えることは出来るのだろうか

(*2016年09月01日白馬大雪渓は通行止めとなった)

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雪渓を終えてもトレイル上に落石を起こしそうな箇所は多く有り
今日のように人が多いときは、特に慎重になる
そろそろ夏の花が目に入るようになった、ここ葱平はお花畑でもある

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暑さに萎れかけながらも花たちは、我ら登山者に癒しを与えてくれる

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杓子岳から濃いガスが流れ落ちては、雪渓に消えてゆく姿
その姿に見とれながら、短き北アルプスの夏の風を吸い込んだ

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頂上宿舎に着くころには、暑さでバテバテ
こりゃ自分へのご褒美に、生ビアの一杯でもやろうか
と、日陰で30分の大休憩を終えると、再び灼熱の稜線へと歩き出す

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杓子尾根から、東方の空は見事な雲海

まるで、雲の上に浮いている姿に脚が進まない
杓子ピークへ直登するが、砂礫に足をとられ体力はどんどん消耗

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杓子まで200m登り、100m下ってコル、そこから200m登って鑓
こんなにアップダウンがキツかったっけ、いや、暑さのせいだ、きっとそうだ

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鑓から、また150m下り、温泉分岐のコルからの登り返し
たった100mほどの、それが厳しく、天狗山荘の屋根が見えたときは
心からほっとした

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山荘へのルートには、チングルマの果穂が一面に揺れ
その姿に脚を止めると、もう夏の陽射しは消え去り、冷たい風

山荘で受付をすると、ダウンを着込んでテラスで生ビール

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  ここで止めたら一生後悔するぞ
  落ちて死んじゃったら後悔も出来ないじゃないのー

お隣に座るご夫婦、明日のキレット行について、渋りだした奥さん
それをなだめるご主人の会話が面白く、笑いを堪えることが出来なかった

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名物の天狗鍋をメインとした食事を美味しく頂くと
自炊室に移ってポケットウイスキー
見知らぬ登山者たちと山談義、外は冷たい風、ナッツを分けてくれるオヤジ

久しぶりの山小屋風景に和んでしまう

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隣で静かに飲んでる、いかにもリタイア直後の元サラリーマン風なお二人は
今朝、唐松から不帰キレットを越えて来たそうだ
やはり人が多くて、行き違いにロスタイムが多く、余計に疲れたとのこと
彼らいわく、逆方向(白馬から唐松)の方が圧倒的に楽だと
それは、基本的に「難所が登り」、となるからだそうだ

  今回は厳しかったな。
  あぁ、厳しかった。Ⅱ峰の降り、あれはヤバかった・・・。

お二人の苦笑いの表情に、想像してたよりもヘヴィだったことが伺える

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そんな話を肴に、ウィスキーを8割ほど空けたところでお開き
部屋は、布団3枚×2列のスペースを3名に割り与えられ
明日待ち受けている岩肌の冷たさ、熱さを想いながら眠りについた



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Commented by cyu2 at 2016-09-07 07:42 x
私が暑さに喘いでザックを何度も放り投げていた頃、スロさんも喘いでいたんですね(^o^)
あの日は天気よすぎる程でしたね〜
もうあの刺すような日差しと夕暮れの肌寒さを懐かしく感じます。
続きも楽しみです(^^)
Commented by nikkor14d at 2016-09-07 11:27 x
山の日つながりの週末は天狗山荘も混むんじゃないかと私は行程を前にしたんですが、大丈夫だったようですね。この山荘辺りなんだか癒やされるので私もリピートしました。二日目のレポに期待(^o^*)/
Commented by slow-trek at 2016-09-07 22:53
cyu2さん
そうなのです
同じ山域で、ちょっとした時間差で汗をかいてました
いやいや、ほんと暑かったですよね
後からcyu2さんの記事を拝見して、私もこんな暑さ対策
しなければ!と勉強させて頂きましたよ^^
Commented by slow-trek at 2016-09-07 22:55
nikkor14dさん
あらま、同じようなルート歩かれてたのですね
って、いやいや、nikkor14dさんのように
天狗から白馬まで、戻るなんてムリっす^^;
確かにあの天狗山荘は癒されますね
きっとあのロケーションが良いのでしょう
私もお気に入りになりました^^
Commented by bphiro at 2016-09-09 09:26
今年の雪渓は早い時期から警戒されてましたね..........
頂上宿舎から杓子、槍ともピーク踏んでるのが素晴らしいです(^_-)
僕もこの前歩いた時はkakaが初めてだったんで回り込んでピーク踏ませましたが僕一人だとスルーで即効で天狗に向かってますよぉ~(~_~;)
Commented by tabilogue2 at 2016-09-10 09:37
白馬尻からデカいキスリングを背負って登りましたっけ・・・ ウン十年前(´艸`) 懐かしい

ズッタズタに崩れた雪渓は白馬らしくないですね。
飯豊の梅花皮カイラギ沢の雪渓はとうに崩れて、、、今年は登高禁止となりました。
Commented by ruonick at 2016-09-11 18:34
今年は本当に雪が少なくて困りますよね…
剱沢雪渓もダメだし、針ノ木雪渓も早くから通行止め…(>_<)
来年以降もこんなことになるのではと不安です!

天狗山荘いいですね♪
ここはテントでも小屋でも泊まったことがないので、一度泊まってみたいです(*´ω`*)
Commented by slow-trek at 2016-09-11 22:56
bphiroさん

>頂上宿舎から杓子、槍ともピーク踏んでるのが素晴らしいです(^_-)

てへへっ
ありがとうざいます
いやいや、実は白馬踏んでから縦走って決めてたのに
頂上宿舎でギブアップ(涙)その罪滅ぼし?的なものです^^;
Commented by slow-trek at 2016-09-11 23:00
tabilogue2さん

キスリング背負って大雪渓ですか
クラシカルなスタイルが目に浮かぶようです^^
ほんと、いよいよ日本は本格的な亜熱帯化へと
ずんずん進んでますよね
いずれ、私たちの次の次の世代に、昔々日本にも
雪が積もってたんだよ、なんて伝えることに
ならないことを願います。。。
Commented by slow-trek at 2016-09-11 23:04
ゆなさん
あ、そうそう、針の木も早くから秋道だったそうですね
三大雪渓なんて、もう無くなって行くのかも
そんなことになって欲しく無いですね。。。
この天狗のテン場は良いですよー、水もね
ロケーションからは想像も付かないほど綺麗な水が
ドボドボ流れてたし、何より小じんまり感と
それに似合った静けさが最高です
ぜひぜひ^^
by slow-trek | 2016-09-06 22:42 | 北アルプス | Comments(10)