その名に惹かれた百名山 雨飾山

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■山行日:2015年09月12日(土)
■山:雨飾山
■目的:名前に惹かれた
■ルート:雨飾高原(07:30)-荒菅沢(09:00)-山頂(11:10-11:30)-ランチ-雨飾高原(15:00)

数年前のこと
敬愛する山の大先輩との会話で、何故か記憶に深く残った言葉

 深田久弥の日本百名山を読んで一番行きたくなった山、それは雨飾山

今年の冬、根子岳へのスノーハイクした後、もう一人の先輩と山頂からの展望について
語っていると、やはり、その方も同じように、百名山を読んで一番気になった山だと

きっとそれは、深田の文章よりも、ネーミングそのものに惹かれたのでは?
なんて勝手に想っているのは、自分自身がそうだからだ

雨飾山・・・なんて素敵な名前だろうか




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神奈川県への転居後、信州はずいぶんと遠くなった
さらに小谷村となると、その移動は、なかなか大変だ
夜明けが近付いた頃に辿りつ付いた雨飾高原でダウン
もうダメだ、と仮眠すると完全に寝過ごしてしまい、歩き始めは7時半となった

晴れ予報は裏切られ、今にも降り出しそうな空の下、朝露に濡れた木道を沢沿いに進む
木道脇には、大きく育ちすぎた、ミズバショウの成れの果てがいくつも倒れている

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木道は、ずんずんと森の中へと誘う
気付くと、いつの間にか大きな大きなブナに囲まれている

ブナの森を、ゆるく登り始めると、小さな雨粒が落ちてきた
あぁ、せっかく長時間ドライブでやって来たと言うのに雨か・・・
ま、いいか
憧れの雨飾山、その名の通り雨に飾られて歩いてやろう

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やがて、少しづつ雨雲が去り、高曇りとなる
ブナの森に陽が注しこんでキラキラと輝き始める

天候の変化に少しだけご機嫌
トレイルは、ちょっとした広間になり、ブナ平との指標がある
ひと息付くには、ちょうどいい加減の距離と場所だ
豪雪地帯のブナはどこも同じように、大きく力強さを持っていると感じる

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まだまだ続くブナの森
ふと気付いたら、なんだこの5/11って・・・何故に11なんだ?
なんだか落ち着かないぞ、今は半分じゃないし、次の6/11は半分以上だし

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ブナ平から30分ほどだろうか、視界が広がると、トレイルはずんずん下る
こんなに下るのか?と思った頃、沢の音と共に巨大な岩肌が目に入る

ここが荒菅沢(あらすげさわ)だ

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この沢から見上げるピークの姿
謂れはよく分からないが、ここから見上げる、双耳峰の姿が「布団菱」と称され
この沢が雪渓で埋め尽くされ、その頂点に鋭角に伸びたピークの画像はネットに溢れ
言わば、雨飾山のシンボリックな存在だ・・・なのに、背景の曇り空が悲しい

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沢を渡渉すると、いきなりの急登だ
ブナも樹林も無くなり、ハシゴ、ロープを頼りに岩を超える
今までの緩やかなトレイルは何だったのか
ここでいっきに高度を稼ぐと、突然視界が広がった

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やっと登り詰めた後に、目の前には笹原が広がる

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空はいつの間にか青空になり
南の彼方に北アルプスの稜線が延び

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北の空は雲と海の境が交わっている

そして

目の前、笹の海原にすっくと立つのは本峰

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これが、深田久弥の言う

 「特別高くはないが品のいい形をしたピラミッド ~
  つつましやかな、むしろ可愛らしいと言いたいような山」

その名も雨飾山だ

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このタイミングで空が晴れ渡ったことが嬉しくて
下山者と行き違いながらも、笹原をずんずん進み、荒菅沢を上から覗くと
最後の登り、この岩稜がなかなか苦しくて、ピークに立ったときは
その場に座り込みそうになった

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深田先生、つつましやかどころか、キツい山でしたよ

双耳峰の南峰には三角点があり、狭いピークは人だかり
北アルプスは高曇りにぼんやりとしてやっと来た感も少なく
早々に降りようとしたとき、北峰の足元に並ぶ石仏が目に入った

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あぁ、そうか
石仏は、雨を蓄えた雲がやって来る、日本海は糸魚川の方を向いているのだ
そして、その雨の恵みを小谷の村に与えるように、このを頂から村を見守っているのだ

その仏を飾った山だから雨飾なんだ
そう、ひとり納得して、この素敵なネーミングの秘密を知った気になった

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霞んだ北アルプスよりも、笹原越しに火打山が望める下山方向が素晴らしい

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笹原に浮かんで見えるトレイルの線は、少女の横顔に見えると言われている

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雨飾温泉への分岐で腰を下ろして簡単なランチ
秋の香りのする風に、笹の海原がゆっくりと左右に流れては戻る

久しぶりの登山だ
下りは、膝を庇いながらの、スローペースとしよう
ゆっくりと下るおかげで、空はどんどん晴れ渡ってゆく

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荒菅沢で、まだ残る雪渓から落ちる水で顔を荒い
その冷たさに震えながら見上げると「布団菱」は輝いていて
その吸い込まれそうな姿をしばらく沢に立って見上げていた

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 「私はその山に心を引かれた。雨飾山という名前も気に入った」

深田久弥の言葉に惹かれた山の先輩たち
そして今日、そんな話に導かれて小谷村にやって来た自分
のどかな村に流れる初秋の風に、その縁を想う

いつか今日の山のことを話してあげよう
自分しか知らない、この山名の秘密について話してあげよう
山の先輩たちの顔を思い浮かべながら、そんなことを想った


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Commented by ルネオバ at 2015-09-29 22:21 x
雨飾山、美しい名前やよね~。
八方尾根辺りから、何度もそのツンと尖がった秀麗な姿を探しました。
八方尾根からだと見下ろす感じになるのよね。

雪倉朝日下山翌日、洗濯物を背負って(!)雨飾温泉から小谷温泉へ抜けたけど、なかなかキツかった・・
今なら歩けないかも・・

少し秋色の笹平が素敵やね~
ここは秋に、も一度登りたい山です。

雨飾山荘すごく気持ちの良いお宿でした。お奨め。
って、なかなか行けないか・・


Commented by ruonick at 2015-09-30 03:16
私も、雨飾山は名前が気になってた山です!
みなさん同じなのですね(≧∇≦)
名前の由来はそーゆーことでしたかっ。

紅葉の雨飾山に行きたい行きたいと思ってるんですが、遠いのでなかなか(^_^;)

笹原は気持ちいい景色ですねー(*^_^*)
横顔に見える見える♪
Commented by Cyu2 at 2015-09-30 08:13 x
良いですね〜
まだ山歩きしてないころ、栂池高原に行った時知った雨飾山の素敵な名前。
小谷村のおたり、という響きも忘れられず、何度か宿の予約をここみるも、いつもいっぱいで断られ^^;
早くこのお山に登って、スロさんの知ったなまえの秘密を山頂から感じとってみたいな^ ^

あ、はなし変わりますが、アラレ平にはウケました^o^

Commented by akt39 at 2015-10-01 22:49 x
はじめまして東京の西に住みますakt39と申します。私を登山に連れてってから拝読いたしております1ファンであります。嫁と二人で山行たのしんでおります。雨飾山!私も行きたくてなかなか行けない山
!たまらずコメントいたしました。何故かあこがれの雨飾。レイ.チャールズを聴きながらの酔っぱらいコメ。失礼しました。

Commented by tabi-syashin at 2015-10-02 07:47
読ませていただきました! 

僕が雨飾山を知ったのは20数年前でした。
当時 海谷山塊のルート開拓が終わって数冊の本が出されました。
なかでも大内尚樹先生と遠藤甲太さんの書物が好きでしたね。

彼らの紹介で知ることができた海谷。「心象の山」の一つです。
Commented by slow-trek at 2015-10-04 19:03
ルネさん
この山の紅葉真っ盛りな画像をD師匠に見せられてから
秋に絶対歩きたい!って思ってました
ちょっと早かったけれど、初秋の風薫る雨飾も良かったですよ
ってか、深田の話、一人の大先輩ってお分かりですよね?
ね?^^;
Commented by slow-trek at 2015-10-04 19:06
ゆなさん
あ、やっぱりそうですか
そりゃこのネーミングですもの
誰しも惹かれますよね^^
そうそう、横顔!ほんとそう見えますね
Commented by slow-trek at 2015-10-04 19:06
cyu2さん

そうそう、おたり村の語感もいい感じですよね
ここもアクセスがたいへんだから、ぜひあの
有名なお宿に一泊でどうぞ^^
えーっ!アラレ平???って、そんな古い
記事まで読まれましたか?
ちょっと恥ずかしいでつ^^;
Commented by slow-trek at 2015-10-04 19:08
akt39さん
こちらこそ初めまして
旧ブログからなんて、ちょっと照れてしまいます^^;
ご夫婦で山を楽しんでらっしゃるのですね
東京から、なかなか行けるようで行きにくい距離ですよね
ぜひ、奥様に錦秋の笹原から、あの峰を見せてあげてください
酔っぱらいコメント大歓迎です
レイチャールズ!楽器店のオヤジ役が似合ってて大好きでした
って、こりゃ古過ぎて伝わりませんよね^^;)
Commented by slow-trek at 2015-10-04 19:08
tabi-syashinさん

海谷山塊ルート開拓ですか、それは素晴らしいですね!
遠藤甲太の名前は知っていますが、大内尚樹は知りません
いつか図書館で漁ってみますね^^
by slow-trek | 2015-09-28 23:28 | 関東甲信越[越後・妙高域] | Comments(10)