荒野にて

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縦走者たちの季節 大峰奥駈道大普賢岳

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■山行日:2016年05月04日(水)
■山:大峰山系:大普賢岳
■目的:奥駈道の風を薫る
■ルート:和佐又(08:10)-大普賢岳(10:10)-水簾滝(13:00-13:30)-和佐又(15:30)
 
5月になると、どうしょうもなく歩きたくなる道がある
それは千三百年もの歴史を持つ「祈りの道」大峰奥駈道だ

毎年GWともなれば、この修験道の主たるルートである、奈良県は吉野から
和歌山県の熊野まで(あるいは逆ルート)、その約80数キロを
4~6日で走破するために、全国から縦走者たちが集う

そう、5月は縦走者たちの季節

このルート、どうしても歩きたくて歩きたくて
2010年年5月、最初で最後のチャンスとばかり、4泊5日で歩き通して以来
春の風薫る頃、どうしょうもなく歩きたくなる

いや、もう一度縦走出来るとは思ってもいない
そんな時間も、体力も、いや情熱すらも、今はもう無いだろう
ただ
あの道を通る風を薫り、あの道を歩き通す者たちの熱気を感じたい
それだけ、それだけでいのだ

さぁ、数年ぶりとなる大普賢岳から、少しだけ歩こう
大峰奥駈道を歩こう
 



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クフの三角シルエットが、栃ノ木と風景の一部のように収まり
和佐又キャンプ場は、春の陽を燦燦と受け光り輝いていた

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見返り台地、そんな素敵な名のある登山口から空を見上げる

青空を背景に、山桜
そして聳える大普賢岳

小さな山旅の始まりとしては
最高のプロローグだ

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九十九折れを、和佐又山分岐まで詰めると
数年ぶりのブナ林が迎えてくれる

新緑の木漏れ日
その中をそよぐ春の風

もう、もうこれだけで帰ってきて良かったなと、そう思う

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ゆっくりと標高を上げながら、木漏れ日の向こう弥山のシルエットを望む
きっと今頃は、縦走者と日帰りハイカーとで賑わっていることだろう

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トレイルはトラバースとなり、指弾ノ窟、朝日ノ窟、笙ノ窟、鷲ノ窟
大峰の修験道に七十五ある靡(なびき)が連続し、二本岳のコルからは
ハシゴや鎖場で標高を稼ぐポイントとなる

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石の鼻から望む二本岳、その丸い森のカタチは10年前と変わらない
 
一歩踏み外すとアウトなトレイルも
春の陽の木漏れ日に浮かぶと、おだやかな貌となる

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トレイルはいよいよ奥駈道へと合流する
一気にピークまで詰めたつもりでも120分か
昔は100分くらいで登ってたよな

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山頂では、本日一人目の縦走者に出会う

そのハイカーは、会話してる間、始終笑顔、少し縦走ハイか?それもそのはず
順峰(熊野から吉野)ルートの彼にとっては、この大普賢まで登りきると
この先は激しい登りも水の心配も無い、あとは吉野まで一泊の軽いハイクだ

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彼は熊野本宮で、とんでも無い人に出会ったと興奮ぎみに語る
その人は、逆峰(吉野から熊野)を終えてた脚で、順峰でUターンすると!
そう熱く語る顔には、羨望の表情が輝いている

往復160キロオーバー?
そりゃすごいよ、そんな事が出来たなら

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奥駈道へ合流すると、すぐに出逢った縦走者、彼の熱さを感じたまま水太覗きへ下ると
あの展望の笹原にフライシートやシャツが風にたなびいている
何してるんだろうか?と近寄ると、その持ち主は、ふたり目の縦走者だった

逆峰の彼は前日、小笹ノ宿でテン泊だったが、夜間の雨がテントに浸水し
寝るどころじゃ無かったそうで、濡れたモノを干しながら休憩中とのこと

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そりゃ大変だったろう、この後の行程を聞くと
弥山は混雑してるだろうから、今日は行者還避難小屋泊まりとして
明日は早出で、一気に釈迦ヶ岳まで歩くとのこと
それは厳しいけど、途中の楊枝ヶ宿の小屋でも泊まれるよ、とアドバイス

 それもいいですね、そうしようかなぁ。時間だけはあるんですよねー

地図を片手に笑顔で頷く縦走者、なんて羨ましい顔、なんて羨ましい言葉

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トレイルは山上ヶ岳、大日、稲村と大峰北部の主峰を眺める
このエリアでも最高の展望となり、未だ新緑の届かない森を過ぎると
61靡の弥勒岳からは激下りの薩摩転、そして稚児泊から
怪しい木橋を渡ると、69靡の七曜岳だ

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水太覗から、ここまで出会った縦走者たちは、皆さん順峰
誰しも疲労がピーク、そして大普賢岳までは激登り、水場も無い
挨拶を返す余裕も無く、表情もうつろなのも仕方ない

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彼らは、何を祈り、誰を想って縦走しているのだろう
80数キロ歩き続けた後に何が待っているのだろう

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挨拶もそこそこに、ただすれ違うだけ、そんな彼らから
迷い、焦り、憧れ、挑み、そんな様々な「想い」が
まるで熱気のように伝わって来るような、そんな気がする

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自分のときはどうだったろうか、と思い出そうとするけれど
たった6年前、なのに、それはもう遥か遠い昔

あの日に忘れて来てしまったよ・・・

360度大峰に囲まれ、七曜岳ピークで、あの頃を想った

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ここから和佐又までの週回ルートは、奥駈道から離れ、深い森へと激下りだ
名残惜しく、奥駈道の道標を撫で、分岐を下り始めたとき
目の前を大きなザックが塞いだ、あ、これはルート誤ってるな?

 縦走ですよね?奥駈道は向こうですよ

振り返ったその縦走者は、満面の笑みで、頭をかきながら話し始める
彼いわく、ここまでも何度も間違っていて、そのつど誰かに声かけられて
どうにかここまで来れた、と

 いやー、ほんと助かりました。これで最後にしたいです

俺もそうだった
いつも誰かに助けられていた
そうやって山を歩いていた
あの頃の自分を思い出し、苦笑いで手を振った

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周回路は、一気に谷底まで下りきる

ふと見上げると新緑の向こう、大普賢岳のシルエット
足元からは沢の落ちる音だけ

静かな大峰の森、静かな大峰の谷底

久しぶりの水簾の滝で、10年前のあの日のことを思い出す

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この流れの下
秋の夕暮れ、冷たい雨、動けない嫁さん、忍び寄る夕闇
まさかのタイムアウト遭難となり

なす術も無く、ただ雨に打たれるだけの二人を
何処からとも無く現れ、エスケープルートへ導いてくれた

あの山の神さまは、今もこの大峰を歩いているのだろうか

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追憶のときから我に返ると
トレイルは激しく登り返しとなる

大汗をかきながら登り返すと
新緑のトレイルは、心地よい風を受けながらのトラバース
足元には、山芍薬の笑顔が揺れ、短い山旅の終わりを教えてくれる

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風薫る大峰
新緑の奥駈道
そして熱き縦走者たち

少しでも近付きたかったのは
奥駈道でも大普賢岳でも新緑のブナ林でも無く

あの縦走を果たした頃の自分だったのかもしれない

いつか
いつか、もう一度歩けるだろうか


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by slow-trek | 2016-05-25 00:07 | 近畿[大峰山系] | Trackback | Comments(12)
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Commented by 橿原太郎 at 2016-05-25 01:08 x
スロトレさん
ご無沙汰です。
大峰の山を歩いておられる記事を読むとうれしくなります。
山を歩くなんて、人とは離れて自然の中に身を置くために歩いているのに
なぜだか、人とのいい出会いがあるんですよね。不思議ですね。
今でも大峰や台高の山々を歩いている時に時々スロトレさんの姿を探していますよ。
残念ながら、遠くにおられるので歩いておられるはずはないのですが・・・
Commented by katsu♨ at 2016-05-25 11:41 x
僕もね、まだ6年かと思うのですよ・・・
しかし感覚としてはもう十数年前の大昔の物語に感じます。

確か出発が一日違いでしたよね。
スロさんは毎日、僕の一日先を縦走していたのですねぇ。
なんだか無茶苦茶懐かしい感覚に包まれます♫
当時のブログを全消去したことは今でも悔やんでいます(笑

この6年でお互いかなり劣化したようですね(汗
体力だけではなく、精神的な部分もね・・・
気力満タンでギラギラした目で奥駈縦走している人が羨ましい。
Commented by nikkor4d at 2016-05-26 03:34 x
なんだか、お疲れモード満載ですけど大丈夫ですか?^_^;
いっその事関西に戻って毎週大峯歩きましょう、すぐに元気になりますよ(^o^)/~~~
Commented by ルネオバ at 2016-05-26 10:22 x
> 少しでも近付きたかったのは
> 奥駈道でも大普賢岳でも新緑のブナ林でも無く
> あの縦走を果たした頃の自分だったのかもしれない
> いつか
> いつか、もう一度歩けるだろうか

思わず、ぐぐっときてしまったじゃないですか。
あの頃・・
羨ましさを通り越して呆れるくらい、歩いてたよね・・
遮二無二突っ走ってたよね・・

数年の間に生活環境も変わり、
ただひたすらに山を歩くこともままならない状況にもなられたようですけど・・

でもでも、まだまだ若いんですもん、
きっと、いつか、歩ける日がやってきますって。

それに、なんやかや言いながら、
スロトレさんの心の底の方にある、静かな強い決意も感じます。
もちろん、奥駈縦走なんてそんなに簡単にできるほど生易しいことではないことも分かっているつもりですが・・。
仕事に忙殺される毎日ではまだまだ先の話・・
10年後を見据えた、長期的な計画やろとは思いますが・・・。
な~に、10年なんて、あっという間、ですって!!(・・て、それも困るねんけど・・汗)

その時は、及ばずながらサポートさせて頂きますよ!!
ま、胸に住所と名前を縫いつけてもらって、
「私の家、どっちやったかしらん??」なんてウロウロしてない限りは・・・(⌒~⌒;)
Commented by slow-trek at 2016-05-26 23:06
橿原太郎 さん
人との出会い、確かにありますが
今回は、ワタシの方から積極的に、いやもしかしたら
一方的に?声かけての出会いだったかもしれません
縦走する人たちの熱さに触れたかったのです
って、これ結構キケンな人物かもしれませんね(汗)
帰阪出来るタイミングを狙っては、大峰も台高も
歩いています、どこかで会えたなら声かけてくださいね
嬉しいコメントありがとうです^^
Commented by slow-trek at 2016-05-26 23:10
katsu♨ さん
そう!それです!さすがご同輩
あの縦走者たちの、あのギラギラした目!あれですよ
あの目に会いたかったのです、そしてあの目をしていた
自分に会いたかったのです・・・たった6年なのにねー
何だか老いるの早いですよね(涙)ほんと懐かしいです
katsu♨ さんの一日前を歩いてんだ^^あの5日間ね^^
今思えば、ほぼ同行してたようなもんですね・・・
Commented by slow-trek at 2016-05-26 23:13
nikkor4dさん
嬉しい励ましのお言葉ありがとうです^^
私も出来るものなら、早く帰って毎週でも大峰を
nikkor4dのように駆け回りたいものです

って、いや、ごめんなさい
例え帰っても、毎週はムリかも(^^;)
Commented by slow-trek at 2016-05-26 23:16
ルネさん

>静かな強い決意も感じます。

って、ほらほら、また勝手にストーリー作ってるでしょ^^;
いやー、まぁね、想いだけはあるんですよ
それに、D師匠の走破もね、めっちゃ刺激になってます
でもねー、ってとこです。
もし、その時が来たら、私より半日前に出て、宿泊ポイントで
炊き立てご飯のおにぎりとか缶ビール、お願いしますね^^
Commented by kivarn at 2016-05-29 21:39
遠くへ行かれたスロトレさん。
思い出したように突然、大峰に舞い戻って来られるのがサプライズのようで嬉しいです。
スロトレさんにとっての大峰の特別感がものすごく出ている記事です。
私は、つい2年くらい前に登ったよなぁと見返すと4,5年経っていたしりて、そんなに昔のことだったんだと思うことしばしばです。
大峰で一度も泊まったことがないので、いつかはもっと浸ってみたいと思う気にさせてくれる内容でした。
それこそ楊枝の宿あたりに。
Commented by スーちゃん at 2016-05-30 16:24 x
写真がいつもとってもきれいで癒されます。
行っていない場所でも、半分行った気持ちにさせてもらっています。
それにスロトレさんの文章は いつも心の中がほのぼのあったかいものを感じさせてくれます。
Commented by slow-trek at 2016-05-30 23:12
キバラーさん
あー、そうでしたか、大峰では泊まったこと無いですか
キバラーさん、大阪に住んでてそりゃもったいない!
弥山のテン場からの朝焼け、釈迦ヶ岳からの雲海
和佐又キャンプ場からの星空などなど、ぜひぜひ体験
してくださいね、もちろん楊枝の宿も^^
Commented by slow-trek at 2016-05-30 23:15
スーちゃんさん
写真を褒められると、どうにも困ってしまいます
いつも、もっと綺麗に撮るには、どうすればいいのやら
って悩みながらUPしてるものでして^^;
文章、ほのぼのですか?極めて個人的な記録なので
そう感じて頂けるなら、私も嬉しいです^^
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山行記録と山にまつわる物語


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