凍て付く水芭蕉 小雪舞う尾瀬

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■山行日:2016年04月30日(土)-05月01日(日)
■山:尾瀬
■目的:早春の湿原
■ルート:鳩待峠(07:30)-見晴(12:00-12:20)-尾瀬沼ヒュッテ(15:00)
     尾瀬沼ヒュッテ(08:30)-大清水(11:00)

2016年のGWは久しぶりにゆっくりと休める予定だった、が・・・
いろいろ諸事情で、ロングトレイルを楽しむワケにはいかない
でも、二泊三日で残雪の北アルプスを歩ければ、それでもう充分さ

ってことで検討していたのは、上高地から蝶ヶ岳だった
29日から01日まで、残雪と、星空と、モルゲンロート
それだけを楽しみにしていた・・・
なのに、あの天気予報だ、あの予報で3,000mの稜線に突っ込む?
オレはそんな命知らずな山バカじゃない

なんて言いながら前夜ギリギリまで天気予報とにらめっこしながら
ようやく諦めたのは深夜だった
さ、変更だ、尾瀬を歩こう
昨年見た、一年に一週間しか現れない幻の湖、尾瀬ヶ原湖を歩こう




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戸倉から始発のバスで鳩待峠に降りると、吹雪いていた

鳩待山荘の庇の下で一列になって様子を伺うグループ
不安そうな足取りで至仏へと向かうグループ
自らの軽装備に嘆き、駐車場へと引き返す半Tシャツの若者たち

予報では、「朝方まで雪が残る」、「稜線上は吹雪く」、とあった
下界の天気予報しか見ていないまま山へ向かう人の多さに驚く

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サクっと準備をすると歩き始める
階段を下るにつれ、風は収まり、寒さもマシになる
トレイルは、木道上に数センチの雪だ

至仏の裾野は、芽吹き始めた森に雪が積もり
美しいグラデーションとなっている
 
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トレイルが谷沿いにうねる度に風の通り道と重なり
思い出したように小雪が叩きつけられる

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山の鼻まで下りきると、さすがにちゃんとした山装備ばかり
昨晩からの雪の中テン泊したグループが寒そうに撤収している

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一息入れて尾瀬ヶ原へ進む
振り返る至仏、一夜の冠雪が、穏やかな山容をさらに美しくさせている

木道上の積雪に足を滑らせながら、静かな尾瀬を歩く

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山の鼻までの小さな湿原は全て雪で覆われて
水芭蕉も見えないほどだったが
どうにか、木道の下には、咲いている姿も観られる

良かったなぁ、お前たち、屋根のあるところで咲く事が出来て

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中田代へと向かうにつれ、木道の下は積雪が多くなり
水芭蕉の姿も埋もれ始める

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逆さ燧ケ岳は、風に波打つ湖面には映らず通り過ぎる

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不思議なことに竜宮に近付くにつれ、積雪は少なくなる
この広い湿原のほぼ中央、そこだけ雪が少ないのは何故だろうか
そのとき、一瞬だけ、ずっと隠れていた燧の頭が覗いた

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竜宮を超えると、下田代は雪が無く
凍りついた水面の藍色、枯れた草原の緋色、立ち込める雪雲の灰白色

一夜で湿原の姿を変えた雪と雲が織り成す色の世界

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この先へ進んでいいものか、ふと立ち止まった
それほど、今目の前にあるシーンは、別世界のようだった

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見晴十字路では、昨年泊まった弥四郎小屋前のテーブルで
休憩がてら行動食を採りながら
怪しい空模様と時計と地図を順に睨みながら迷う

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いや、予定通りだ
このまま尾瀬沼へ抜けよう

初めてのルート、十字路から東、沼尻までの5キロを歩き出す

トレイルは、ブナ林の中、凍る木道を進む
小さな沢を越えながら、ゆるく高度を上げてゆくと
森はどんどん濃くなり、足元から大きな沢の流れる音が響く

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ときおり思い出したように吹き付ける雪にカメラはザックに収めた

白砂峠を詰める頃は、標高差300mにも満たない行程に疲れきっていた
峠を越えると白砂田代は風の通り道、吹雪から逃げるように足早になる

視界が広がると、そこは尾瀬沼だった

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初めての尾瀬沼、その美しさを望むのは
昨秋、火災でその姿が無くなった沼尻休憩所の焼け跡だ

静かな湖畔、今も焦げ臭い焼け跡に
毎年多くの人を癒したであろう、小屋を思うと
どこからか夏の喧噪が蘇るような気がした

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大入州半島の森も、さすが燧ケ岳の裾野らしく森の美しさが深い
こつこつとひとり歩く木道の音が、巨木の森に吸い込まれ
歩くたびに静けさが濃くなるような気がする

長蔵小屋に泊まろう、そう決めていた
なのに、気付いたらヒュッテの前に立っていた

ま、いいか、引き返すのも面倒だし

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思ったよりも凍る木道歩きに疲れたカラダに
熱い湯のお風呂が嬉しくて、これまた独り占めの湯船で長湯すると
湯上りの生ビアは冷え切っていたはずのカラダに沁み渡る

翌朝、朝靄に煙る湖畔からは、燧のシルエットが薄らと見えるだけ
空からは、これが最後だとばかりに、雪が舞い落ちて来る

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今日の予報は、昼前から晴れ
もしかすると、待ってる間に、燧が見えて来るかもしれないな

いや
もういいや、もう充分さ

もともと悪天候の予報の中
北アをあきらめて思いつきで訪れた山開き前の尾瀬

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モノトーンからパステルへのグラデーション
そして、下田代の奇跡的な極彩色と、雪雲かかる燧ヶ岳

いろんなシーンを魅せてくれた5月の尾瀬、静かな尾瀬、色鮮やかな尾瀬
こんな尾瀬を歩けた、それだけで充分さ
そう自分に言い聞かせながら、山旅の終着点、大清水へ下った


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Commented by pallet-sorairo at 2016-05-20 08:53
素敵な尾瀬、ご一緒させていただきました。
ありがとう。
Commented by slow-trek at 2016-05-22 07:37
palletさん

嬉しいコメントですねー
こちらこそ、ありがとうございます^^
Commented by katsu♨ at 2016-05-23 18:36 x
スロトレさんは大好きな大峰を頻繁に歩けない寂しさはあるのでしょうが、
関西在住ではなかなか頻繁に登れない山々に行けて羨ましいなぁとも思うのですよ・・・
僕が一生行けないかもしれない美しい風景を拝見させてもらえるだけでも嬉しいなぁ・・・
で、夫婦漫才はまだ?(笑
Commented by slow-trek at 2016-05-25 00:11
katsu♨さん
ありがとうございます
確かに、こうして関西の山ヤとして
好き勝手に関東エリアを闊歩出来るのは幸せですよ^^

>で、夫婦漫才はまだ?(笑

うーむむむむ。む?むぅ
秋くらいには、もしかすると夫婦で歩いてるかもです^^
Commented by cyu2 at 2016-05-27 08:09 x
今読み返すとあの吹雪は何だったの?ってなりますよね〜
まだたった一か月しか経ってないのに。
自分の事も思い出しました(笑)

今年は雪が少ないですね。
ずいぶん前ですがGWに至仏と燧ヶ岳登った時はまだ尾瀬ヶ原も雪の下で、テレマークスキーの方がたくさんいました。
同じ場所、同じ季節でも見えるもの違うの、わかっていてもこうして見せてもらえるとしみじみ感じますね〜

こんな尾瀬沼もしっとり素敵(^^)
Commented by slow-trek at 2016-05-29 06:47
cyu2さん
そうなんですよねー
たった一か月前に吹雪いてたんですよね
本当は至仏踏んで見晴のどこかで泊まれば
いいかなー、なんて思ってたのですが
見事に裏切られましたが、なかなか見ることの
できない尾瀬に出会えて良かったです^^
by slow-trek | 2016-05-20 00:19 | 東北[南会津・尾瀬] | Comments(6)