荒野にて

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ロード・ムービー インドにて

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今回の出張目的は全て終え、最終日は朝から移動し
とある企業へ表敬訪問すると、タイ経由で日本へ帰るだけ

こうなると気も楽なもので、現地法人の皆さんとも
分かれるのが寂しくさえ思えてくる
なんて感傷的ムードは突然消えることに
なんと、急遽、現地コーディネータが同行出来なくなったのだ

となると?
このオレのブロークンな英会話だけで乗り切らなければならない?

オーマイガッ!




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訪問先の企業がある都市は、ムンバイだ
ホテルのキングサイズベッドに寝っ転がってビール片手にタブレットで見ると
プネから180キロほど西の方向か・・・もうそこは海が近いじゃないか

アラビア海だ

たぶん、一生のうち最初で最後だろうな
行こう、アラビア海を見に行こう

昨日まで4日間つきあってくれたドライバーは交代し
見知らぬドライバーJの運転するTOYOTAで旅は始まる

インドの道路には交通ルールも信号も無い、そこにあるのは
暴力的なまでのドライビングテクニックと目に見えない秩序だけ
交差点では、そろそろ右折させろよ的オーラが一丸となって盛り上がると
不思議と直進車は止まり始め、右折の流れが本流へと変わる

不思議な国インド

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いつものガタガタ道から反れ、初めて通る立派な道へ入ると
愛想のかけらも無いドライバーJが「highway 」とだけ言った

タブレットで確認するとムンバイ・ブーナ・エクスプレスウェイだ
ドライバーJに、聞いてみた
午後からアラビア海に連れて行ってくれないか?

「アラビア海?オレの知ってる海なら連れて行けるぞ」

ドライバーJよ、この辺りで海ったらアラビア海だろう

 「じゃ、ちょっとスピード出すぜダンナ」

そんなふうな事を言った後、TOYOTAはハイウェイを飛ばし始めた

カーラジオからは国籍不明な怪しいダンスミュージック
乾いた風と土埃舞うハイウェイ
ときおり歌い始める、コミュニケーションレスなドライバー
横を走るのは、ターバンを巻いた老人が幌の中にぎゅう詰めなトラック

オレは今インドにいる、そして行き先はアラビア海
ロード・ムービーの始まりだ

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ホテルを出て3時間、ムンバイはスラム街だらけのプネよりも洗練された観光都市だった
美しい湖があり、高級アパートメント、ホテルが立ち並び
街は観光客狙いの小型タクシーで溢れかえっている

某社への表敬訪問をきっかり予定通り終え、ドライバーJを探すが居ない
TOYOTAも駐車場から消え、オレひとりっきり
現地用のNOKIAでJをコールするが、怪しいアナウンスが流れるだけ

オーマイガッ!

15分が経過した、焦りもピーク
駐車場の警備員も不審そうに見ている
30分が経過した、怒りがピーク
さぁて、どうする
エアチケット、パスポートは手元のバックにある、機密事項に相当する
ドキュメントもある、キャリーケースには何が入ってたっけ
最悪、失ってもどうにかなるか・・・
そう思うと肝は据わった

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タブレットを出すとグーグルMAPで現在地を表示する
そこからアラビア海に面するタージマハルホテルまでのルートをチェック

さぁ、これで後はタクシーを捕まえて交渉すればいいだけだ
このまま空港なんて行かないぞ、オレだけでもアラビア海に行ってやる

ビジネス街から通りへ出る、タクシーがたむろしていたところを
記憶を頼って歩いていると、見覚えのあるTOYOTAが目の前に止まった
窓から顔を出して笑うドライバーJ

 「ええ加減にしろーっ!待ってろ言ぅたやろー!お前なんかクビやー!」

ムンバイの大通りで両手を振り上げて大阪弁の怒声を浴びせてやるが
Jは、何を怒ってるんだダンナ?的なキョトンとした表情で、全然申し訳ない感じが無い
涼しい顔して、降りてくるとドアを開け、仰々しく手を差し述べる

まったく、インド人って
これじゃロード・ムービーどころかコメディだ

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プネとは違った混雑、違った規則性で道路は機能しているようで
バックパッカーと路上生活者とタクシーが入り乱れ、どんどんカオス状態な中
睡眠不足と疲れと全行程が終わった安堵感で、ふらふらするほど眠たいのだが
今、目に入ってくるモノ全てを見ておこうと無意識のうちに何かがそうさせている

きっと、いつの間にか、この不思議な国、インドに魅了されているのだ

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世界遺産であるチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅はスルーする
街並みは、ホテルも石畳も、イギリス植民地時代の名残が今も残り
これもインドなのか、と魅せられる
ヴィクトリア様式の建築物を縫うように狭い通りを抜けると、そこは海だった

アラビア海だ

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インダス川の流れ込むアラビア海は、傾きかけた陽に輝いていた
インド門の下までは歩こうと、車を降りて進むが、多種多様な人種
それは血も民族も老若も貧富も信ずる神も、それら全てが異なる人種
ありとあらゆるヒトが集まり、ありとあらゆる匂いが混ざり合い
その空間に生まれた(熱)のようなモノが見えない壁となって前に進ませてくれない

何だこの熱狂は

路上生活者が半裸で観光客に何かを売りつける海岸
通りを挟んでセキュリティに守られて建つタージマハルホテルには
世界一流の高級ブランド店が並び富裕層がプールサイドでシャンパンを飲む

この相反する世界
それが、今回の旅の終点だった

まるで世界の広さを始めて知った少年のように
大地から放たれる熱に任せて歩くしかなかった

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疲れきって車に戻ると、ドライバーJは 「もういいのかいダンナ?」
「あぁ、もう十分さ」 表情だけの会話
走り出そうとするTOYOTAに、小さな子供が体当たりする
手には粗末な造花、大きな瞳で何か訴えかけている

こんな時は完全に無視して目も合わせてはならない
そう現地コーデイネータに言われていたし、こんなシーンは
もう何度も出会っていた、無視すればいいのだ

でも、その娘の澄んだブルーの瞳が、昨日の現地法人のサリーの女性と重なって

つい、窓を開けようとしたとき、ドライバーJが大きな声で怒鳴った
小さな娘とオレと、二人とも怒鳴られたかように首をすくめる
TOYOTAは、何事も無かったかのように交差点へと向かう
振り返ると、さっきの娘が造花を手に笑っていた

貧富の差は世界一
不思議な国、インド

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チャトラパティ・シヴァージー空港へ向かうメイン道路は高架橋となる
その道路の足元にはいくつもの小さな通りが入り乱れ
どの通りにも同じように人が、バイクが、トラックが溢れている
どこへ行っても人、人、人、何故に彼らは移動するのか

不思議な国、インドに完全に呑み込まれた5日間
ロード・ムービーのエンドロールは
13億もの民が生きる大地をアラビア海に沈みかけた夕陽が染めるシーン

ラストシーンだけは最高だな

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空港でドライバーJと別れ際

  「 छ्त्रपती शिवाजी अंतरराष्ट्रीय विमानतळ 」

きっと故意にヒンドゥー語を使ってオレを罵ってるんだろうな、それも笑顔で
こちらも負けずに笑顔で返す

 「来年も来るけど、お前だけは雇ってやらないからなー 」

お互い笑顔でシェイクハンド旅は終わった

また来るよインド


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by slow-trek | 2015-12-04 00:21 | | Trackback | Comments(2)
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Commented by pallet-sorairo at 2015-12-04 11:21
海外出張のお疲れは取れましたか
…って、職業人はそんなこと言ってられないか(^^;

インド、行ってみたいです。
アラビア海って、なんだか特別な感じがしますよね。
私も初めてアラビア海を前にした時
「自分の生涯でアラビア海を見ることがあろうだなんて、
想像したこともなかった…。」
と書いたのを思い出しました。
Commented by slow-trek at 2015-12-07 00:08
palletさん
そうなのです、我らサラリーマンは、出張帰りだからと
言ってゆっくりなんてできなくて^^;
ほんとですよね!アラビア海を見るなんて!
想像もしてませんでしたよね、私のバヤい
仕事がらみの偶然なものだったので、その驚きは
とても大きなものでした
palletさんのように、世界を旅することが改めて
羨ましく思えました^^
line

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