荒野にて

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10月の黒部 太郎平小屋にて

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■山行日:2015年10月10日(土)-12日(月)
■山:雲ノ平(って、ここは山じゃないぞ)
■目的:冠雪の薬師岳を望む
■ルート:折立(05:45)-太郎平(09:00)-雲ノ平山荘(15:20)
     雲ノ平山荘(09:30)-太郎平(15:00)
     太郎平(08:00)-折立(11:00)

深夜3時頃、小屋の壁を叩き付ける雨風の音で目覚める
小屋全体を揺らすほどの力強い風
雨は、その粒音からも勢いが分かる

昨日、追い抜いていったテン泊装備のソロ男子君は
テン場でどんなことになっているだろう?
最悪の状況でも、あのテン場には立派なトイレがある
あそこへ逃げ込めばどうにかなるだろう
なんてことを思い浮かべながら、嵐の中でうとうと
 



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夜明け

小屋には重い空気が立ち込めている
このまま折立に下山する自分はいいが、縦走を狙っている人は
この天候にどうしようかと、悩んでいる

昨晩、自炊テーブルで山談義をしたグループも
今日は三俣まで、明日、黒部五郎経由で折立のプランとのこと
驚いたのは、そこに水晶のピストンをプラスすると・・・

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どう考えてもこの風だと水晶はムリ、三俣も今後の雨量によっては
足元が危ういと、リーダーさんに話していると、受付で会話を聞いていた様子の
伊藤さんも、水晶の稜線は、ここの3倍の風が吹いている、絶対に中止すべきだと
その厳しい口調に、リーダーは納得し、プランを変えたようだ

重い空気の中、雨粒が霙へと変わり、窓を打つ音もバラバラと変わった
それでも出発する登山者たち、カウンターから見守る伊藤さん
一人ひとりに行き先を確認し、一言二言アドバイスをしている

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緊張感、喧騒、朝餉の匂い、窓の隙間から入り込む冷気

小屋閉め前日の雲ノ平山荘、突然冬の扉が開け放たれたような
荒々しい空気を感じながら、窓越しに霰が打ち付けるのを見ていると
このまま、ひと冬この小屋に閉じ込められたくなる

嵐を見守ってると、ガスの向こうから誰かがやって来た、あのテン泊君だ
全身ずぶぬれ、下半身は何と短パン?
テントの浸水は我慢していたが、深夜の強風でポールが折れ
朝までトイレに逃げ込んでいたと笑う、その顔には恐怖のカケラも見えない
若さ、とは何と怖いもの知らずなのだろうか

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しばらく窓の外を見ていたが、雨、霰、風は収まりそうにもなく
重い腰を上げて小屋を出た
風は横殴り、当然どの山も影すら見えない
雹が顔を打つのを避け、俯いてそろそろ歩く

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木道の下は川、その川はどんどん溢れて行く
薬師沢への下りは、心配していた通り、完全な川、所によっては滝状態だ

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ここで滑るとやっかいだ、慎重過ぎるほど慎重に下り
昨日と違って濁った黒部川が見えたときには、一気に疲れが出て座り込んだ

  道が川状態で大変したねー!

あのテン泊君が、まだ濡れた短パン姿のままで追い抜いて行く
こっちはタイツにパンツ、さらにレインパンツ姿でも立ち止まると震えてると言うのに
寒さは感じないのかよ君は・・・ったく、若さが羨ましいよ

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テン泊君が消えると、残るのは静寂だけ
 
薬師沢小屋も、テラスは撤去され、人の気配も無く寂しい限り
もうここは人が立入ることを拒絶する季節に入るのだ

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雨上がりのガスの中を太郎平まで黙々と詰める
薬師沢への下りの疲れも溜まったまま

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いつも帰りに、雲ノ平と水晶を振り返るポイントも
冬の雪雲とガスに覆われて何も見えず、ため息ひとつ

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なんだか疲れたな
太郎でもう一泊するか、もしかすると明日は白い薬師が望めるかも

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ふらっと思い浮かんだ通り、太郎小屋に向かう
小屋の中は、もうシーズンの終わった静けさとストーブの香り

8名ほどの賑やかで、底抜けに明るい男女の台湾人チームに一人囲まれての食事
食後は、食堂の片隅にあるこたつで、ウイスキーを飲みながら
自炊のテン泊君と山談義

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愛知から来たと言う彼は、なかなかクレージー、百名山と日本の滝百選を追いかけてて
一日に、縦走ではない百目名山二座と、滝を二つやっつけたことがあるほどの俊足
昨年は併せて70をこなしたそうだ

まだ若い君が、そんなに急ぐと、その先の目標無くなるぞ
ん?毎年黒部エリアに来て飽きないかだって?
自分のさ、自分の一番好きな山、一番好きな森ってないか?
それをさ、遠く離れた街からときおり想うのさ
あぁ、今頃はどんな色なんだろうかなー、どんな空気なんだろうかなーって
でさ、毎年一度訪れるの、それだけで人生が豊かになるのさ

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なんて、ウイスキーの酔いに任せ、先輩風吹かせて語りながら夜はふけて行く
深夜外へ出ると、昨日は見えなかった星空が瞬いていた


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by slow-trek | 2015-11-14 19:59 | 北アルプス | Trackback | Comments(10)
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Commented by pallet-sorairo at 2015-11-14 21:40
スロさんの黒部、しんしんとした空気が伝わってきます。
で、前日と打って変わったお天気を約束しているような素敵な星空。
もしかして12日朝4時頃東の空じゃないですか?
だったら、赤い星は火星で左下の星は木星、
赤い星の右上にちょっと離れて金星が輝いていたはず
…のような気が。
羨ましいような星空だけど、違うかなぁ。
Commented by dahan at 2015-11-14 23:31 x
なんか素敵な木のテーブル
嵐の夜もエエ感じやないですか
オイラも夏なら短パンはきますけどw
スー兄貴の大人な山にいつも憧れてますよ^^
オリオンが眩しーい
Commented by slow-trek at 2015-11-14 23:41
palletさん
前日とうって変った天気は約束されませんでした^^;
雨こそ降らなかったのですが・・・ま、続きは本編で
(って、こればっかり^^;)
んなことよりですね・・・palletさんって、すんごい!
この画像、記録時間はですね
12日04時06分でしたよ!
素晴らしい、ご推察^^
Commented by slow-trek at 2015-11-14 23:44
dahanさん
そですね、こんな冬枯れの台地で
嵐の中、小屋にいるって、確かにね
何とも言えない感じでした^^
dahanさんも短パン?いやいや、この日は霧氷が
出来てもおかしくない状況でしたからねー
もうね、見てる方が寒くって^^;
Commented by ルネオバ at 2015-11-15 00:20 x
懐かし・・あの木のテーブル・・
思わず4年前の画像を引っ張り出して観てしまったじゃありませんか《;~Д~》
山は晴れるに越したことはないけど、
そして、真っ晴れの大展望は素晴らしいけど、
でも、でも、雨に打たれて風にあおられて、
何してるんだかな~・・なんて、腐りながら歩き続ける・・
そんな山も、ココロに残るんだよね・・
晴れた日には見えてこないもの、
想いを馳せることができなかったものが感じられる・・
・・って、そんな気がしません?
ええ山旅だったやん!

スンマセン・・ほろ酔いなもので、何言ってるんだか・・・ですが・・
Commented by slow-trek at 2015-11-15 00:26
ルネさん
あの日からもう4年ですか?
何度も言いますが、あの山行の黒部、あれ以上の黒部はね
きっと無いでしょう、あの後何度か、あの日よりも素敵な
黒部を!なんて思ったこともありますが、今ではもう
そんなのは無いって開き直ってますよ^^;
でもね、それでも歩くのです
自分の一番好きな山と森と川なのです
えぇえぇ、私も酔ってますよー
Commented by bphiro at 2015-11-15 10:06
(^_^)
黒部源流域はどこもかも素敵ですよねぇ〜
僕もこの山域だいすです!
スロさんが書くと、ほんと短編小説みたいになるからやっぱり才能なんだろうなぁ(*^_^*)
Commented by ruonick at 2015-11-22 12:01
わかります!
遠い地で思うんですよね。
あのエリアは今どんなだろうって。

黒部源流域は、毎年絶対行かなきゃ気が済まないです!
しかし今年は雲ノ平には行けずでした。。。

お気に入りの山や地に何回も行くのっていいですよね。
季節を変えたりして行きたいなぁ。
Commented by slow-trek at 2015-11-23 23:42
hiroさん
黒部源流エリア
人によっては雲ノ平なんてどこが好いの?
なんて言われますが、私はあの囲まれ感が最高に好きです
ま、これだけ毎年行く山ヤもあまり居ないかも?ですが^^;
Commented by slow-trek at 2015-11-23 23:43
ゆなさん
理解いただいて嬉しいです^^
同じエリアに毎年足を運ぶって
ある意味贅沢なことですよね~
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