荒野にて

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神々の峰 二月の西穂高

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■山行日:2014年02月23日(日)
■山:西穂高独標
■目的:神々の峰を望む
■ルート:西穂高山荘(07:20)-独標(09:10-09:20)-西穂高山荘(10:10)

一週間前に上高地スノーハイクで飽きるほど眺めた穂高
その穂高に、関東広域を真っ白にした二度目の大雪が降った週
もう一度逢いに行った、
もっと白く、もっと神々しく輝く姿に逢いたくて

そして
初めて雪の西穂高を踏みたくて

まだ、除雪作業で渋滞中の上信越自動車道に乗った




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大雪の影響か、観光客もまばらな新穂高温泉
雪雲の合間から除く青空、そして鋭く尖る稜線に早くも胸が踊る

気のせいだろうか何だか高齢者グループが多く感じる
そのグループをザクザク追い抜いて西穂高山荘に着いたのは15時

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手続きを済ませると、することもなく
用意してたお酒とガスを持って自炊室で雪見酒

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こんなシュチュエーションで一人、山荘のおでんで熱燗を一杯
そして明日の予報は晴天、もう最高な週末じゃないか

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翌朝、まだ早朝のガスが濃く、皆さん出足がゆっくりな山荘から一歩出る
風が冷たい、弱い風ではあるが、身を切るような冷たさに武者震い
冬山はこれくらい寒い方がいい

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振り向くと焼岳の向こう、乗鞍が浮いている
あぁ、初めての雪の穂高

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丸山を過ぎると一気に、勾配がキツくなる

前方の女性と見られる単独者が気になった
一歩一歩の足取りが、あまりにも頼りない、いや、危ういのだ
何故、こんな人が一人でこんなところを・・・

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余計なお世話だと思いながらも声をかけると、連れの方は
アイゼンにも慣れていない彼女をおいて、一人先に登って行ったそうだ
悪いことは言わない、ここから引き返した方がいいですよ、と諭すと
斜面を振り返った彼女は、脚がすくんだようにしゃがみこんだ

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  「怖いでしょ?怖いと自覚したらもうダメなんですよ、降りませんか?」

うんうん頷くだけの彼女を立たせて、緩やかになるところまでフォローして一緒に降った
あのままだと、登ることも降ることも出来なくなってただろうな

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ポールをピッケルに持ち替えて、再び独標に向かって歩き出す

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前穂が輝く

冷たい風に包まれ

空に近づく

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独標に立つ人が見え始める
さぁ、あそこに立とう

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登り詰め、岩稜を西側に巻くと、一度細い暗部に降り
鎖を頼りにピークに乗る、一瞬空を見上げて登りきる

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あぁ穂高だ

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と、最高の一瞬を期待していたが

なんだ、この混雑っぷりは・・・と戸惑っているところへも
次から次へとやって来る登山者たち

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いや、これ、このままじゃこの狭いピークで輻輳して
ちょっとヤバい状況になるぞ、よし、この混雑から一足先に行くか

と、ピラミッドピークへの降りに向かうが、脚が止まる

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ここまでの状況とは明らかに違う
雪が融け、剥き出しになった岩の表面が完全に凍り付いている

そうか、こんなコンディションなんだ
頭の中で、ここを降るシーンをイメージする
後ろ向きで、ピッケルはダガーだ、アイゼンの前爪を蹴って・・・

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その時、目の前を数人が一気に降り始めた

え?そんなに間を詰めて?何の躊躇もなく?

彼らの下り方は、あまりにも怖さを知らない
それって、一人何かあったら、全員道連れだぞ?
最悪の事態を想像して足元が震えた、それほど彼らは恐いもの知らずに見えた

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こちらの心配も知らず、ガツガツを音を立てその集団は鞍部まで下り
そのままの勢いで、これまた間を詰めたままピラミッドピークまで詰めて行く

そのシーンをただただ、呆けたように見守っている間に
下山した者と、更に進んだ者とで、ピークは人が掃けて自分独りっきり

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何故だか、急に憑き物が落ちたような

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今日は・・・今日は、もう下山だな

最後に、自分も踏むはずだったピークを見上げた
朝陽を浴びて輝く穂高は相変わらず神々しくて

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何故オレは今下ってるんだっけ?
行けば良かったじゃないか
こんな青空、しかも無風だぞ

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今までだったら、何も考えず行ってたぞ
どうしたオレ?

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振り返る度に輝きを増す穂高

下りながらずっと後悔していた

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空は青く風は無い

どうしたオレ

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何を躊躇したんだ

自問自答しながらザクザクと下る

山荘まではあっと言う間だ

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釈然としないままアイゼンを脱ぎ捨てて、小屋に入る
缶ビールを買って一思いに飲むと、深いため息

そこに、見知らぬ若者がやって来た
ん?なんだ?

 「あのー、連れが助けてもらったそうで。ありがとうございました」

一言残して、戻って行く奥のテーブルには、朝の彼女が頭を下げている
あぁそうか、あの彼女の・・・

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そうか、そうだよな、オレも怖かったんだ、それだけなんだ
それを認めたくなかっただけなんだ

正直に認めよう
岩稜に張り付いた雪と氷、あのミックス状態は怖かった
そりゃ怖いよ、だってそんなコンディションの岩稜降ったことなんてないもの
あの細い尾根、狭まった鞍部、あのグループがザクザク降りて行かなくても

オレ一人じゃ降れなかったよ、怖かったよ

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あの岩稜も自分のメンタルも含めて今日のコンディション
あそこで止めるのが正解だったのだ

胸につかえてたモノがすっきりすると
山荘の名物であるラーメンも美味しくて

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何度も何度も振り返りながら
神々の峰を後にした

また来るさ
また目指せばいいさ、雪の西穂高


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そんな想いを忘れないため
ここに記しておく
by slow-trek | 2014-08-03 07:28 | 北アルプス | Trackback | Comments(16)
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Commented by dahan at 2014-08-03 22:11 x
怖かった、と正直に引き返したスー兄貴はさすがやと思います。
ラーメン美味そう^^
Commented by bp-hiro at 2014-08-04 01:06 x
(^_^)
なんか小説の一コマ読んでるみたいでした。

スロさんが下ろしてあげた方、後で小屋でその相方さんと会ったようでずが、厳冬期の穂高の稜線で足元覚束ない彼女を置いて自分は先に進む!
こと自体が、そもそもパーティーで入山する資格は無いですね。
雪山慣れしてなくて怖がる彼女を置いて自分は先に行くなら最初からソロで入山すればいいのにね(ーー;)

スロさんは優しいですね!
僕なら、初めて会った人でも関係なく一言言ってるだろうな〜

ここで、ぼやいても仕方ないですねm(__)m

スロさんも良き判断ですね!
怖いと思ったら引返す。
大事な事ですよね~_~;
Commented by akko-kornblume at 2014-08-04 08:21
おはようございます!

すがすがしい空に輝く西穂高・・・もうこれを見ただけで十分だと思うのです。
独標から先はガイドが必要な領域なのに、お天気とか雪のコンディションとかで
登れちゃったりするから恐ろしいですよね。
私はガイドに猿回しにされて登ったけれど、ここは自分達だけでは来れないって思いました。
怖いとは思わなかったけれど、恐ろしいところだって思いました。

スロトレさん、やっぱり優しいなぁ~~~!
声をかけてもらった女性、どんなに心強く思ったことか。
他人事ながら、良かったねっスロトレさんに会えて~~って嬉しくなります!

危なくないところだと私もよく相棒に置いていかれちゃうけど(苦笑)
でも、時々振り返ってくれてるみたいです(^-^; たぶんね。

去年の秋の初め。あまりの混雑にピラミットピークまでしか行けなかったので
またリベンジしたいな~って思ってます。
スロトレさんもまた雪が降ったら・・・ですね!
Commented by pallet-sorairo at 2014-08-04 11:09
これもまたスロトレワールドですね。
真摯に自分へ向き合うのが素晴らしいです。
Commented by slow-trek at 2014-08-04 22:25
dahanさん
さすがも何も、ね
恐くて尻尾巻いて下山しただけですから^^;
ラーメン美味しかったですよ
Commented by slow-trek at 2014-08-04 22:27
bp-hiroさん
出たな説教オヤジ^^;
まぁね、誰かがキツく言ってやるべきかと、私もそう思います
ただ、この日は自分自身がアレだったもので^^;
確か、hiroさんちが二週間後?くらいにピーク踏んでましたよね
めーっちゃ羨ましかったです、また来シーズンです!
Commented by slow-trek at 2014-08-04 22:33
矢車草さん
あー、そうなのです、こんな素晴らしい穂高拝めててね
ピークだ、登頂だ、と、贅沢だなと、そう反省します^^;
しっかし、猿回しってウマいこと表現されますよね~
剱もそうですが、このような岩稜で一番怖いのはラッシュですよね
交通整理的な機能が無いので、混雑が混乱を呼んで
とんでもなく危険な状況に陥る場合があります
リベンジするなら、平日をお勧めしますよ^^
Commented by slow-trek at 2014-08-04 22:35
palletさん
いえいえ、お恥ずかしい
単なるヘタレなだけなのですよ(涙
でも、まぁ、正解だったかなー^^
Commented by cyu2 at 2014-08-05 16:31 x
いいですね、正直な自分の気持ちにちゃんと向き合えて、
ちゃんと文字にして残す。
スロトレさん、素敵です。
私も「なんでこんなところで?」と人は思うところで固まったこと何度も。
高所恐怖症なので、怖いと思うと一歩も出なくなるんですよね。
それを言い訳に登れない山が多すぎて困ります(´ω`。)
Commented by slow-trek at 2014-08-05 23:07
cyu2さん
向き合うとか言われると、ちょっと照れますが、、、
まー、ヘタレな悔しい気持ちを、こうして正直に残しておけば
来シーズン、頑張れるかなってところです^^;
言い訳でもいいじゃないですか、も少し、あと一歩頑張ろう!
みたいなところと、あぁこれ以上ダメってところのボーダーが
はっきりしてるってことは、それだけ無事故で歩けるってことですよ^^
お互いに、そこの境をきちんと持っていましょうね!
Commented by 梨丸 at 2014-08-07 19:58 x
鳥さんがこのレポを見てメチャメチャ刺激を受けられたようですが、私も同様に刺激されました♪

冬の西穂高は私もよう登りません!!

前爪の付いたアイゼンすら持ち合わせておりませんし、凍った岩場はとにかく怖い!

でも、独標に立って、あの場所から白い神々の峰を見てみたい。

次の冬場の新たな目標になりました(笑)

Commented by slow-trek at 2014-08-08 21:50
梨丸さん
あー、そんなに刺激強かったですかぁ^^
それは、記事にした私的には嬉しいことですよ
ぜひとも、来シーズン、独標まで頑張ってくださいね
あ、でも、独標までも前爪アイゼンあった方がいいですよ
最後のピーク手前鎖場のところ、凍ってると結構危ないので
そこんところも認識の上で!
白い穂高、美しいですよ^^
Commented by ゆな at 2014-08-10 00:01 x
ほんと、小説読んでるみたいでした!
スロトレさんの文章は引き込まれますねー(*´∀`)

怖かったら引き返す!大事ですね(´・ω・`)

夏に、雪山の記事は涼しくていいですね♪シュカブラがキレイすぎます(*´ω`*)

Commented by slow-trek at 2014-08-10 00:34
ゆなさん
シュカブラ?雪の画像は難しくて・・・
お互い、恐かったら引き返しましょう
ね?
決して高天原方面から岩苔乗越への雪渓登り詰め、だなんて
そんなディンジャラスな山歩きは止めましょう^^;
しっかし、素晴らしいソロ山旅でしたね
しばらくモニターから目が話せませんでしたよ♪
Commented by ちゅーた at 2014-08-11 00:00 x
スロトレさん、こんばんわ。
小説を読んでいるかのようで釘付けになりました。
写真を見ているだけで、想像しただけで、雪と凍の独標から先は怖いです。
怖いと思ってしまったら、もうダメなんですよね。
いくら気持ちを強く持とうとしても、自分の気持ちはごまかせない。
行ってしまったら、進むのも戻るのも怖くて足がすくんで動けなくなってしまいそう...!
あぁぁぁ...読んだだけなのに、心臓のドキドキがとまらない...!

でも雪の穂高は美しいですね!
行けるところまで近付きたくなってしまいます^^
Commented by slow-trek at 2014-08-12 22:14
元気いっぱい可愛いちゅーたさん^^
そですね、怖いと自覚した時点で、もうその先は
フツーでは無い、いつもの自分では無くなってます
その状態で進むと、膠着して進退窮まるってことに陥りますよね
はい
そこまで分かってても行くのですよね
それほどまで雪の山は美しいですね
ってか、これ読んで心臓ドキドキって^^;
小ねずみさんの心臓ですね^^
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山行記録と山にまつわる物語


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