荒野にて

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蘇った渓谷 大杉谷(後)

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■山行日:2014年05月10日(土)
■山:奈良県台高山系大杉谷渓谷
■目的:全線復旧したルートを一気に遡行する
■ルート:第三発電所(07:15)-桃の木山の家(11:00-11:35)-堂倉滝(14:40)-日出ヶ岳(18:10)

桃の木山の家で休憩の後、このルート最大のポイントとなる七ツ釜滝へと向かう
事故多発を警告する看板を過ぎると、大日嵓のように、岩を掘ったトレイル
勾配は感じられないが鎖がしっかり付けられているのは、高巻きが続くからだろう




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七つの釜、その全体像はあまりにも大きすぎて分からない
何百年かかったとしても、これだけの釜が出来るほど、岩を侵食するだけの水量がある
やはり紀伊山地の水量は計り知れないものだ

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四阿を過ぎると、やはりトレイルは高巻きとなり、このルート最大の高度感を覚える

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大台ヶ原から下って、脚が疲れてるところ、この足元が濡れていたりすると・・・
ここはルート上、特に要注意箇所だろう

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七ツ釜を巻き終えると、ゆるやかな流れとなる、なんだか滝の最上部が覗けそうだ
トレイルを逸れて河原に降る踏み跡に従って、花崗岩っぽい河原に降りる
そこには、ちょっとした落ち込みしか覗けないが、水の色が深い

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七ツ釜吊橋を超える、もういくつ吊橋を超えたのだろう
まだ山は深く、谷が続き、水の色はどんどん美しくなって行く

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そして、それは突然現れた
前を行くルネさんの脚が止まる

崩落地だ

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それは、想像していた以上の姿だった、それだけ惨い姿なのだ
2004年10月の台風23号、山林関係者が語る「山が動いた」との表現は、これだったのだ

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この惨状にも驚愕させられるが、この崩落地を再び歩けるようにしたヒトたちの
情熱に敬意を感じ得ずにいられない

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巨岩石をの山を縫い、巻き、岩のピークを踏んで行く
足元は固められていて、マーキングもある

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もう二度と歩けない、と言われたルート、この崩落地を自然遺産として残し
そしていかに安全に歩けるか、工夫した努力の結果に感謝したいと心から想う

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しかし、山の深さが凄い
この渓、この山、果てしなく続くかのような、その深さに恐れすら感じる

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崩落地を過ぎ、伏流となった河原に降りて大休憩
あの大崩落地に圧倒され、この先はもう堂倉滝だけだ、との安心感から
まったり食事と、会話は尽きず、こんなところで40分も過ごしていた

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いいよね、こんな秘境でまったりランチなんて贅沢で
なんて笑っていた、この後に控える急登の苦しみも知らずに

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ランチの後は、次なるポイント光滝を過ぎ、隠滝は結局どこにあるのか分からないまま
与八郎滝、この辺りはもうポイントも小さく、それほど見応えも覚えず
淡々と吊橋を超えてゆく

そして大杉谷ルートのクライマックス

吊橋を数歩進むと、左手から突然の冷たい風、そして滝の落ち込む轟音が襲ってくる
人知れずごうごうと音を立て落ちる堂倉滝、最後のポイントに相応しく、美しさと迫力に飲まれる

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少し陰っているおかけだろうか、これまでのエメラルドから
淵の色は完全な紺碧へと変わり、落ち込みの飛沫の白が映える・・・恐ろしいほどの美しさだ
 
涼やかな風が、滝の正面にけなげに咲くアクボノツツジを揺らす中
その突然現れた劇的なクライマックスに、吊橋の中央でルネさんと立ち尽くす

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始めは唖然と、その光景に魅入っていた二人も、自然と笑みが沸き
この透き通った青い空の下、こんなにも素晴らし秘境に辿り着けたことに感動しあった

 「さぁ、あとは登るだけですよ」
 「えー、ここまでも登るだけでしたよぉ」

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そんな笑い声もすぐに消え、激登りに汗が滴り落ちる
堂倉滝に魂を吸い取られたこともあってか、脱力感から脚も遅く
この辺りから、左足に痛みが出始める、この痛みとは長いつきあいだ
だからカバーして歩く術は心得ているが、この急登はそれもままならい

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ルネさんに遅れながらも、どうにか大台林道まで詰め上がる
あぁ、ここまで来たらもう大丈夫だ、この先の日出ヶ岳までは何度か歩いてて不安は無い
堂倉避難小屋で最後の休憩をとる

 「あと標高差500Mよー、2ピッチで行きましょ!ね!?」
 「ほらほら、少しでも脚の筋肉をマッサージして、こうやって、ほら」

標高差約1400m、距離にして16キロの遡行
確かに厳しいけど、それくらい今までの山行にもあっただろ?
オレって、こんなにダメだったっけ?こんなにも体力落ちてたんだ・・・

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ルネさんに励まされるが、左足をカバーしてムリをさせた右脚までも重くなる
例の歩幅の合わない階段が、さらに苦しめる・・・こりゃダメだな

 「コトさんちが心配してるといけないから、ルネさん先に行って下さい」
 「何言うてるのー、もう少しもう少し、頑張って!」

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シャクナゲ平で倒れこむ私を心配そうに見下ろすルネさんに申し訳なくて一歩一歩登る
いつの間にか大台の森が夕陽に染まり始めている

赤く染まる森の向こう、日出ヶ岳の展望台が見え始めた、もうすぐだ

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やっと辿り着いたピーク、声も出せないままハイタッチのあとは
ガクガクする脚で、這うように展望台に上る

あぁ・・・
大峰に陽が沈んで行く

なんて美しいんだろう

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あの深い深い谷を一気に詰め上がり、だからこその夕陽
本当のクライマックス、それは堂倉滝ではなくて

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もしかすると
もしかすると、この落陽の一瞬の為に16キロ遡行したのかもしれないな

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胸の奥にまで沁入るような夕陽に照らされながら下ると
駐車場へのコースはもう暗くなり初めている

早く、早く行かないとコトさんちが待ってる
気持ちは焦るけれど、脚はガクガク

やっと駐車場が見え始めると、もう真っ暗
どこだ?コトさんちの車、どこだろう?

と、その時、暗闇の向こうから眩い光
コトさんがパッシングで照らして迎えてくれたのだ

その何度も繰り返すパッシングの眩しさが嬉しくて嬉しくて
ルネさんと二人、両手を振って歓声を上げながら、最後の力を振り絞って駆け出した



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もう二度と歩くことが出来ない、と言われた幻のルート
どこまでも続く渓谷、迫りくる嵓、果てしない山深さ
大台ヶ原を赤く染めた夕陽が、大峰に落ちてゆくシーン
そして、暗闇の中迎えてくれたパッシンングの眩さ

・・・また忘れられない山旅がひとつ

   
by slow-trek | 2014-06-17 21:46 | 近畿[台高山系] | Trackback | Comments(18)
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Commented by katsu at 2014-06-18 00:09 x
2009年公開の映画「点の記」後の劍岳登頂がヒートアップしたように、
今年の大杉谷は今後、劍のカニのタテ・ヨコ並の渋滞があるかもですね(笑
関東からも遠征に来てますからねぇ・・・
夏から秋にかけては事故が起こらなければと心配します
Commented by pallet-sorairo at 2014-06-18 07:18
素晴らしいですね大杉谷。
下の廊下みたいなところは長く続くのかしら。
私も遠征に行きたいくらいです。
落陽も素敵、これは忘れられない山旅になりましたね。
羨ましい。
Commented by げんさん at 2014-06-18 08:00 x
大杉谷、素晴らしい谷の色、山の深さ・・・
遡行を終えて、夕日の山頂。ぐっと胸にきますね。

久しぶりに渓へ行きたくなりました。
Commented by at 2014-06-18 08:23 x
ぐっときました…
また感動記事が増えました

今の僕にはまだ山深さ=恐怖です^^;
もうしばらく修行して、訪れたいです。

まずは大台に夕陽を見に行こうかなあ(笑)
Commented by お気楽 at 2014-06-18 08:47 x
開通日に足を運びました。
崩壊地を眼前に、口をぽっかりあけた自分がいました。
25年ぶりの大杉谷でした。
Commented by slow-trek at 2014-06-18 22:18
katsuさん
確かに当日も東京都ナンバー一台ありましたが
まさか「点の記」騒動までには至らないような・・・
でも、本当に事故がなければいいのですが
関東エリアから遠征組が増えたら、それはkatsuさんの
ブログのおかげですよね^^
Commented by slow-trek at 2014-06-18 22:19
palletさん
下の廊下的な所は、何か所も続きますよ
でも鎖はしっかりしてるし、ちゃんと掴んでれば
何の問題もありません、ただし、一部の廊下的な場所は
狭くなってるので、登り下りが輻輳したりすると危険です
もちろんお互い声かけあった譲り合えばいいのですが。
もし遠征されるなら、プラン組立フォローさせて
頂きますよ^^
Commented by slow-trek at 2014-06-18 22:20
げんさん
いいでしょ、いいでしょ
あの桃の木山の家もね、小さなお風呂とかあって
なかなか味のある小屋なのです
たまには関西遠征いかがですか
Commented by slow-trek at 2014-06-18 22:21
恭さん
>今の僕にはまだ山深さ=恐怖です^^;
その謙虚なスタイルは重要なことだと思いますよ
私はそれが無かったから、何度も痛い目に^^;
大台の夕陽!これからいい季節です
私は何度行っても飽きません、ぜひ大台行に!
Commented by slow-trek at 2014-06-18 22:21
お気楽さん
口ぽっかり・・・ですよね
あんな光景を目の当たりにすると、ヒトって小さくて
何も出来ないもんだ、なんて真剣に考え込んだりします
25年ぶりでしたか、どれだけ姿が変わったのでしょうね・・・
コメントありがとうございます
Commented by bp-hiro at 2014-06-19 22:08 x
スロトレさん

我々も下から七釜滝までのピストンだったけど、相方2号のリクエストもあり行って来ましたよ(*^_^*)

崩落跡までは今回行かずに、毎度ののんびりマッタリ飲んだくれ入山でした!
Commented by つくだに at 2014-06-20 15:49 x
私も ゴールデンウィークに歩きました。三重県に住んでいて歩く機会は何度かあったのに 県内のルートだから・・・また自分が大杉谷渓谷の美しさにに無知だったからなのか また今度・・・とのばしてしまい2004年の大水害が起こり歩けなくなりました。なので自分の中で三重県から日出ヶ岳まで歩くこと 大杉谷を歩くことは重要項目となり尾鷲道を歩いてたり 桃木まで開通となれば桃木まで 林道経由で開通となれば林道経由でといった風にこれまで歩いてきました。今回 最後の開通区間の崩落地を歩いた時は 水害のすごさをまざまざと見せつけられました。こうやって正規のコースを歩けるようにしてくださった方々に本当に感謝です。私は、今回は 日出ヶ岳から大杉谷発電所へ向かい歩いてのですが三重県に住んでいても大台ヶ原まで公共交通機関を利用していくと5時間ほどかかります。お隣の県でも遠いところですが これからも何回でも歩きたいと思っています。日出ヶ岳から見る夕日 格別ですね
Commented by slow-trek at 2014-06-22 07:39
bp-hiroさん
あ、早速行かれたのですね
まったり飲んだくれ?いいですなぁ、それもアリですよ
奥様のブログも楽しみにしてますね^^
Commented by slow-trek at 2014-06-22 07:42
つくだにさん
ごぶさたしています
ブログ拝見しました、つくだにさんも大杉谷には
強い想いを持ってらしたのですね、記事を読んでて
ひしひしと感じることが出来ました
しかし、三重県内なのに、ほんと大変なアプローチ^^;
今さらですが、秘境の奥深さを感じますね
Commented by ジオン at 2014-06-25 21:05 x
今頃のコメントで、、m(_ _)m
山に行き過ぎ、読み逃げでした。

いつかは行きたいと願っていたところです
素晴らしいですね
レポありがとう
この秋か、来春行きたいです
Commented by slow-trek at 2014-06-27 23:29
ジオンさん
秋はねー、団体さんの予約が結構入ってるそうですよー
あ、でも、水曜会?だったら大丈夫かもしれませんね
ここはぜひとも歩いてくださいね♪
Commented by キキ at 2014-08-05 21:24 x
大杉谷、拝見しました!
14年前に行ってました。当時雨の中なのによく歩いたなぁ。
で、渓谷なので雨でもそれはそれでとても綺麗だったのですが、
晴れてる時の大杉谷もとてもきれいですね!

やはり生きてるうちにまた歩きたい所のひとつだと改めて再認識です♪

それにしても一日で上まで行ってしまうとは、
最近はみなさん速い方多いのでそんな感じなのでしょうが、
後半のあの登りがとってもキツそう~!(><)
Commented by slow-trek at 2014-08-05 23:16
キキさん
14年前ですか、え?雨の中?それはそれは足元怖かったでしょうね
生きてるうちにって^^;
関東の方は、なかなかアプローチがたいへんですね
キキさんが登山口まで乗ったと言われてた船は、私が行ったときは
動いていませんでした、今はバスを予約してでないと登山口まで
行けないそうなので、ますます遠いところになりましたね
でも、蘇った渓谷、いつの日かお子さんたちに見せてあげて下さいね^^
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山行記録と山にまつわる物語


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